盆地の底から富士山が見える?!~諏訪盆地の成り立ち~

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県土の約8割が山という山岳県にあって、下諏訪の諏訪湖岸という盆地の底から、約100キロも離れた富士山が、何物にもさえぎられることなく眺望できるというのは地学的に奇跡的といって過言ではありません。この神秘的なほどレアな情景は中山道や甲州街道を通る旅人たちをはじめ、今もなお多くの人々に感動を与えています。ここではどのような地学的な偶然が重なってできたのか、諏訪盆地の成り立ちとともに解き明かしていきます。

まず、諏訪盆地を地学的に見てみましょう。こうしてみると、日本列島を形成する上で欠かせない2大構造線である「中央構造線」と「糸魚川―静岡構造線(糸静線)」がちょうど諏訪盆地で交差しているのがわかります。諏訪湖をはじめ、温泉あり、火山あり、良質な黒曜石や豊富な種類の岩石があり、と諏訪の地形が様々な表情をみせるのもこのような地学的特徴からきているのです。

では、その2大構造線が交差する様子を詳しくみていきましょう。日本列島を横断する中央構造線がちょうど諏訪盆地辺りで糸静線に断ち切られ、左横にずれているのがわかります。一方、縦に走る糸静線も諏訪盆地で2本に分かれているのがわかります。どうやらこのことが諏訪盆地の成り立ちに深くかかわっているようです。

(藤森孝俊,1991,「活断層からみたプルアパートベイズンとしての諏訪盆地の形成」より作図)

では、諏訪盆地は一体どのようにできたのでしょうか。そのカギを握るのが日本列島の南に位置するフィリピン海プレートです。今から100万年ほど前から、フィリピン海プレートより北西方向に押す力が働くようになり、特に糸静線中部には強く圧迫されるようになりました。糸静線を境に東側にはフィリピン海プレートから働く圧力が、西側にはユーラシアプレートから逆に圧力がかかり、その荷重が最も強かった場所で左横ずれ運動がおこり、諏訪盆地が口を開けるようにしてできた(プルアパートベイズン)と考えられています。

このフィリピン海プレートによる巨大な力により諏訪盆地が作られていく過程で、楕円型の富士山やその周囲の湾曲した山並み、糸静線中部の約60㎞に及ぶ溝地形など、独特の地形や地質体があちこちにでき上がっていきました。

このように、山に囲まれた諏訪盆地から富士山が見通せるのは、フィリピン海プレートからの圧力により諏訪盆地、溝地形、富士山が一直線に並んだ結果であり地学的には非常に稀有な現象によるものなのです。

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