長和 下諏訪~中山道でつながる2つのまち~歴史と体験の小旅行に出かけよう

長和町から下諏訪町に抜ける国道142号は、長野県の東信地域と中南信地域をつなぐ幹線道路です。「和田峠」と呼ばれるこの場所は、江戸時代には、五街道のひとつ「中山道」の最高地点として知られ、それより前の旧石器時代から縄文時代にかけては、質の高い黒曜石の産地として、全国各地から人々が訪れた歴史が残ります。
令和4年に、和田峠を貫く有料道路「新和田トンネル」が無料化されたことで、より気軽に行き来して楽しめるようになった2つの町。今回は、下諏訪町から長和町を目指して、中山道がつなぐ歴史や文化、食にまつわるおすすめのスポットを紹介します。

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下諏訪宿本陣

中山道の中央にあり、軍事道路として敷かれた甲州街道の終点でもある下諏訪宿。交通の要所として多くの人で賑わい、一般客のほかに参勤交代や日光例幣使、茶壷道中の行列、また公用で通る諸大名などが多く宿泊していました。

本陣の「岩波家」は問屋を営んでおり、交通運輸を取り仕切ったり、幕府の下で宿場の最高責任者を任されたりしていたほか、今で言う裁判所の役割を担う家でした。その権威を裏付ける貴重な資料として、今も苗字帯刃御免、別札宗門などが保管されています。

現存する建物は、県宝に指定された主屋と各種門、書庫や炭や味噌の蔵と、春日神社の全9棟。主屋から見える庭園は、10年の歳月をかけて、深山幽谷の景色と各地の名石600個以上を選りすぐって作庭された築庭式石庭園です。植えられえている植物は江戸時代から変わっておらず、四季折々の美しさに心が洗われるよう。

かつて皇女和宮が宿泊し、明治天皇が休息したという由緒ある主屋で、ゆったりした時間が過ごせます。

蕎麦屋みのり 秋宮前

中山道が結ぶ東京・日本橋と京都・三条大橋。その日本橋にルーツを持つ蕎麦屋が、下諏訪四つ角駐車場のすぐ横にある「蕎麦屋みのり秋宮前」です。

日本橋にある人気立ち食い蕎麦屋「そばよし」で修行を積んだという店主の太田さんのこだわりは、特別に伝授してもらった秘伝のつゆ。「そばよし」を運営しているのが、1839年創業の鰹節問屋ということもあり、ひと口啜ると、カツオの旨みとコクが口いっぱいに広がります。温かい蕎麦はふわっと華やかに、冷たい蕎麦はキリッと締まって、味わいが変わるのも一興です。

仕入れているのは、長い歴史を持つ鹿児島県枕崎、指宿産の本枯節。水分を極限まで飛ばして旨みが凝縮された鰹節は、削った際に出る粉をご飯にかけて食べる「おかかごはん」も人気メニューのひとつです。こちらはライスを注文すると、かけ放題の粉が入った小瓶がついてきます。

そのほかにも、エビやイカ、小柱が入った高さ10cmのかき揚げ「海宝かき揚げ」や各種定食など、幅広いメニューが揃う蕎麦屋みのり秋宮前。鰹節は販売もしているので、自家用にもお土産用にも良さそうです。

しもすわ今昔館おいでや

「しもすわ今昔館おいでや」は、2つの博物館と街歩きの拠点が併設された複合施設です。1階にはパンフレットや街歩きマップなど観光情報が揃い、無料で利用できる休憩スペースやミュージアムショップ、足湯「御柱神湯」などがあります。

ひとつ目の博物館は、時の歴史と時計の仕組みについて学べる「時計工房儀象堂(ぎしょうどう)」。館内には時計づくりの工房があり、時計づくりの体験は、小さなお子様から大人までOK。

セイコーエプソン(旧諏訪精工舎)OBの技師に教わりながら、自分だけの時計を組み立てられます。中庭にある「水運儀象台」は、1092年に建設された中国の大型天文観測時計の設計書をもとに、世界で初めて完全復元した貴重なもの。水力で動く高さ11mの時計台で、昔はこれを使い、時間の管理と天体観測、占星が行われていました。

もうひとつは、縄文時代から今に続く黒曜石の歴史に触れる「星が塔ミュージアム矢の根や」という博物館。町内にある国史跡「星ヶ塔黒曜石原産地遺跡」などで見つかった埋蔵文化財を展示しています。

黒曜石は、火山性ガラスでできた鉱物で、遥か昔からナイフや矢じりなどの石材として利用されてきました。この地域の黒曜石は良質なものが多く、鋭い割れ口は、石器として加工がしやすかったそう。

建物のすぐ隣には、「青塚古墳」という古墳もあり、歴史ロマンを肌で感じる設え。縄文時代から続く黒曜石と人々の関わりはイラストや映像でわかりやすく描かれ、楽しく学ぶことができます。

おんばしら館よいさ

下諏訪町を訪れたなら、一度は触れておきたいのが、7年に一度の天下の大祭「御柱祭(おんばしらさい)」。正式には「式年造営御柱大祭(しきねんぞうえいみはしらたいさい)」という名称の祭りで、寅と申の年に宝殿を造営し、諏訪大社の社殿の四隅にあるモミの大木を建て替えます。

諏訪大社春宮から歩いて3分ほどの場所にある「おんばしら館よいさ」は、迫力満点の祭りの魅力がたっぷり詰まったミュージアムです。模擬御柱や実際に使われる長持ち、騎馬行列などの道具の展示は、その大きさと煌びやかさに思わず声が出るほど。町の人たちの祭りにかける熱い思いが伝わります。

また、ここで乗っておきたいのが、御柱祭最大の難所「木落し」を擬似体験できる木落体験装置。ハッピを着て、丸太の装置にまたがります。

振動は外から見ている以上の体感があり、迫力ある映像と合わさって、本当に坂を転げ落ちているかのような臨場感。最後に手をあげ、「よいさ!よいさ!よいさ!」と声をかけるまでがセットの、貴重な体験が待っています。

和田宿本陣

下諏訪宿のひとつ隣、中山道六十九次の二十八番目に位置する和田宿。かつての和田峠は、「中山道の難所」と言われるほど危険の多い道で、この和田宿にも、参勤交代の大名や一般の旅人など、多くの人が立ち寄ったとされています。

「本陣」と呼ばれる長井家は、趣のある大きなお屋敷です。当初の建物は、文久元年(1861年)3月におきた大火で全焼してしまいましたが、11月に皇女和宮の降嫁の大行列が宿泊する予定があり、急いで再建されました。建物は、大名などの宿泊にあてられる「座敷棟」と、生活空間である「居室棟」の2つありましたが、今の和田宿に残っているのは居室棟。昭和の時代に復元修理されたもので、国史跡として登録されています。

1633個の石を置いた板葺き石置きの屋根が特徴で、竈門や風呂などがあり、生活をしていた様子が伺えます。なかには本陣に宿泊する大名や公家の名を書いて掲げた「関札」が残されていたり、かつて大名やお姫様が乗って山を越えたという「籠」があったり。重厚感のある建物と合わせて、展示も楽しめるスポットです。

黒曜石ミュージアム・星くそ館

長和町側にある黒曜石の産地「星くそ峠」。足元で光る黒曜石のかけらを、空から降ってきた星のかけらだと信じたことから、「星」にちなんだ地名が付いたと伝えられる場所です。

こちらのミュージアムでは、近隣から出土した石器や発掘現場を復元した展示などを交えながら、旧石器時代から縄文時代までの3万年に及ぶ歴史を紹介しています。また、ミュージアムから遊歩道を歩いて向かう星くそ館は、黒耀石発掘跡の横幅20m、高さ5mの地層の断面をそのまま見ることができる、世界的にも希少な施設です。

遺跡保存を先導してきた学芸員の大竹幸恵さんは、小学生の頃に黒曜石に魅せられ、長和町に移住してきたひとり。今も国史跡「星糞峠黒耀石原産地遺跡」で、縄文時代の継続的な学術調査を続けている考古学の先生ですが、とても気さくに石の魅力を教えてくださいます。

館内には、黒曜石を使った石器づくりなど本物の素材に触れるたくさんの体験メニューがあるほか、お土産として、黒曜石を使った小物やアクセサリー、矢じり作りセットなどの購入も可能。遠い昔の人々の暮らしに思いを馳せながら、キラキラ輝く黒曜石に触れてみてはいかがでしょう。

信州立岩和紙の里

300年の伝統を持つ立岩和紙(たていわわし)は、名前の由来でもある、長和町立岩(たていわ)地区で生産される手漉き和紙です。

江戸時代、依田川の清流と高冷地特産の「楮(こうぞ)」に恵まれた長和町では、農閑期となる冬季の重要な副産業として紙漉きが始まりました。手漉きの和紙は、手仕事ならではの温かみのある風合いに加え、吸湿性、吸音性、保温効果が高いのが特徴です。生活様式の変化とともに需要は衰退しましたが、一時は町内に工業組合がつくられるほど、町の経済発展にも貢献してきました。

国道沿いに建つ「和紙の里」は、原料となる楮の釜ゆでから紙漉き、乾燥まで、昔ながらの手法を丁寧に守る場所。今も行われている紙漉きの実演を見たり、体験でうちわや葉書を作ったり、本物の和紙でできた製品を買うことができます。併設の食事処では、地元で栽培された蕎麦を自家製粉した手打ち蕎麦がおすすめ。伝統文化に触れる貴重な機会として、立ち寄りたいスポットです。

長門牧場

白樺高原の入り口にある長門牧場は、標高1400mの爽やかな気候に、青々と広がる草原が心地よい癒しの牧場です。東京ドーム45個分の広い放牧地で、200頭ほどの乳牛、ひつじやアルパカなどが飼育されています。可愛らしい動物たちと触れ合い体験ができるのはもちろん、雄大な景色のなかで行う乗馬は、大人も楽しめるアクティビティ。休日には、搾りたてミルクでバターやチーズを作る体験なども充実しています。

長門牧場で楽しみたいひとつは、フレッシュで安心の美味しいものたち。濃厚なソフトクリームをはじめ、敷地内のレストランでは、クリーミーでコクのあるチーズがたっぷり乗った本格ピッツァやチーズフォンデュが人気のメニューだそう。心地よい風と美味しいもので、のんびりゆったり癒しの時間が過ごせます。

また、併設のショップには「自然の恵みを最大限生かした長門牧場らしいもの」というコンセプトのもと、ここでしか買えない自家製品が勢揃い。可愛らしくパッケージされた品々は、お土産にもおすすめです。

古くは黒曜石、そして江戸時代に中山道がつないだ2つの町。今も大切に受け継がれ、守られている歴史と文化の数々は、両方合わせて体験することで、学びも楽しみも倍増していきそうです。これを機に峠を行き来し、新たな魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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